ー商品の同質化が進む背景ー
アパレル業界は斜陽産業と言われていますが、経済産業省の「アパレル・サプライチェーン研究会」の報告書によると、1990年代に約15兆円あった市場規模は2010年には約10兆円になっており、その後も緩やかに降下の一途をたどっています。
その背景には、メーカーやブランドが商品の企画や生産を「ODM」と呼ばれるアウトソーシング型にしていることが大きな要因であるとされています。
メーカーやブランドがコスト削減や売り筋を追求することを優先した結果、自社で行うよりも専門会社に任せているのです。
それにより、独自性のある商品が作れなかったり、同じ生地を使った類似商品が生まれ、結果として年々同質化が進んでいます。
同質化が進むと他社商品との差別化が難しくなり、価格競争へと繋がります。それによって今度は商品の品質が低下し、消費意欲を減退を招いています。
ー縫製工場が抱える危機ー
このしわ寄せは、工場も受けることになります。メーカーやブランドはコストを抑えるため、生産費用を押さえようとし、工場の工賃をコストダウンします。
日本の縫製工場の現状はメーカーの下請け工場として業務が多く、バブル崩壊、リーマンショック、ファストファッションの台頭、生産の海外移転の影響など、様々な背景のもと工賃が下がり続けています。そして当然ながらメーカーやブランドの売上が伸び悩む以上、受注量も減少しています。
日本には技術力の高い職人を抱える縫製工場が多かったのは過去のことです。今は、このような状況から廃業を選択する工場が増えています。
また、職人の高齢化が進むものの、先行きが明るくない業界には若い人材が入ってこないため、後継者不在で技術が衰退するという危機が起きています。
くわえて、コロナ禍で経営危機に陥っている工場も増えています。